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EDS/EDX（Energy Dispersive X-ray Spectroscopy) とは、電子線やX線の照射により発生したX線のエネルギーと信号量から元素分析を行なう手法です。日本語では「エネルギー分散型X線分光法」と言います。また装置自体を指して、「エネルギー分散型X線分析装置」とも言います。さらに電子顕微鏡に装着した機器に限定してSEM^*1-EDS、TEM^*2-EDSと表記されることもあります。

SEM-EDSやTEM-EDSなど電子線照射を利用した場合は、マイクロメートルからナノメートルオーダーの微小領域の元素分析を行うことができ、異物や不良個所の解析に多く利用されています。

^*1SEM：Scanning Electron Microscopy　「走査電子顕微鏡」
^*2TEM：Transmission　Electron Microscopy　「透過電子顕微鏡」

EDSとEDXの違い

EDSとEDXは、両方とも「エネルギー分散型X線分光法」、または「エネルギー分散型X線分析装置」を意味します。英語のEnergy Dispersive X-ray Spectroscopyの頭文字をとって、EDSまたはEDXに略称されています。

電子顕微鏡と分析装置

真空中で電子線を試料に照射すると、電子線と試料の相互作用により電子、X線、光などが生じます。

※右図：電子線と試料の相互作用（走査型電子顕微鏡の場合）

これらの信号から微細構造、組成や結晶構造などを知ることができます。そして各信号の検出と解析には電子顕微鏡に専用の分析機器を装着する必要があります。

電子線と試料の相互作用

走査電子顕微鏡用分析装置の種類（一例）：

エネルギー分散型X線分析装置
(EDS/EDX：Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)
- X線により元素情報を得ることができます。
波長分散型X線分析装置
(WDS/WDX：Wavelength Dispersive X-ray Spectroscopy)
- X線により元素情報を得ることができます。
カソードルミネッセンス分析装置
(CL: Cathodoluminescence)
- 陰極光から発光特性や構造欠陥などの情報を得ることができます。
結晶方位解析装置 (EBSD：electron backscatter diffraction)
- 後方散乱電子回折のパターンを元に結晶情報を得ることができます。

様々なSEM用分析装置

EDS/EDX分析とは

EDS/EDX（エネルギー分散型X線分析装置）は、電子線照射により発生したX線の情報から元素分析や組成分析を行なう手法です。入射した電子により構成原子の内殻の電子軌道に空孔ができると、安定化のため外殻からの電子準位の高い電子が遷移してくる現象が見られます。

この過程で放射されるX線は特性X線とよばれ、その元素ごとに固有のエネルギー値を示します。得られた特性X線のエネルギーから試料に含まれる元素(₄Be～₉₈Cf)の存在を数秒間で同定することができます(定性分析)。さらに各特性X線の強度から各元素の含有量計測(定量分析)、観察視野内での偏析(マッピング)などの解析も行なうことができます。

特性X線の発生

EDS/EDXスペクトル

現在、液体窒素冷却を必要としないシリコンドリフト検出器（SDD : Silicon Drift Detector）が主流となり、メンテナンスの容易さや分析時間の短縮によりさらに汎用化が進んでいます。X線の発生領域は試料内部における反射電子の散乱に依存し、一般的に空間分解能はμmとされていますが、近年では試料の薄膜化、極低加速電圧(～3kV)、そして大面積SDDの使用により、数十～百nmレベルでの分析が行われています。また特殊なウインドウレス型SDDは、より低い電圧で動作し、10nm以下の構造も解析することができます。さらにこのウインドウレス型SDDはリチウム（₃Li）の検出も可能なことから、リチウムイオン電池開発にも応用されています。